息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

ICU入室したCOVID-19患者の国際パネルによる推奨

Guideline: An international panel provided 54 statements or recommendations for management of ICU patients with COVID-19.

 Crit Care Med. 2020 Mar 27. doi: 10.1097/CCM.0000000000004363. 
 
Surviving Sepsis Campaign COVID-19 panelによるガイドライン
12カ国から36人の専門家が参加、日本人はいない
 
感染コントロールと検査
1. 医療従事者はエアロゾルを産生する手技ではN95マスクの着用を他の保護具(手袋、アイシールド、ガウンなど)とともに推奨する
2. エアロゾルを産生する手技は陰圧室で行うことを推奨する
3. COVID-19ではない患者の対応はサージカルマスクの使用を提案する
4. エアロゾルを産生しない挿管された患者の対応はサージカルマスクの使用を提案する
5. 気管挿管時はビデオ喉頭鏡の併用を提案する
6. 気管挿管は、試行の回数を最小にして伝搬を抑制するため気道管理に最も経験のある人が行うように推奨する
7.1 挿管されたCOVID-19が疑われる患者では検査は下気道の検体を用いることを提案する
7.2 挿管されたCOVID-19が疑われる患者の検体は気管支洗浄やBALよりも気管内の吸引を提案する
 
循環動態
8. COVID-19のショックでは静的指標に加え、体温、CRT、乳酸値の動的指標を用いて体液量の評価を行うことを提案する
9. 急性期の蘇生ではconservativeな輸液戦略を提案する
10. 急性期の蘇生では晶質液の使用を推奨する
11. 急性期の蘇生ではbuffered crystalloid(ラクテックなど)の使用を提案する
12. 急性期の蘇生ではヒドロキシエチルスターチ(HES)を使わないことを推奨する
13. 急性期の蘇生ではgelatinsを使わないことを提案する
14. 急性期の蘇生ではdextransを使わないことを提案する
15. 急性期の蘇生ではルーチンにアルブミンを使わないことを提案する
16. COVID-19のショックでは第一選択の昇圧薬としてノルアドレナリンを提案する
17. ノルアドレナリンが使えない場合はバソプレシンやアドレナリンを提案する
18. ノルアドレナリンが使える場合はドーパミンは使用しないように推奨する
19. ノルアドレナリン単独で増量してもMAPを維持できない場合はバソプレシンの使用を提案する
20. MAPは60-65mmHgを保つように昇圧薬を増量することを提案する
21. 心不全の証拠があり、輸液とノルアドレナリンでも低血圧が遷延する場合はドブタミンの使用を提案する
22. ショックを繰り返す場合は低用量のステロイド(ヒドロコルチゾン200mg)を提案する
 
人工呼吸器
23. SpO2が92%未満で酸素投与を提案し、90%未満で酸素投与を推奨する
24. 低酸素による呼吸不全や臓器障害がある場合はSpO2を96%以下に保つことを推奨する
25. 従来の酸素療法で保てない場合はNHFCを提案する
26. NIPPVよりNHFCを使うことを提案する
27. NHFCが使用できず挿管の適応がない場合はNIPPVを試し、短期的にモニターすることを提案する
28. ヘルメット型のNIPPVがマスク型のNIPPVより良いかに関しては推奨なし
29. NIPPVやHFNCを使用する場合は頻繁に呼吸状態の悪化がないかモニターし、悪化した場合は早期に挿管することを推奨する
30. 人工呼吸器の設定はlow tidal volume(4-8ml/kg)を推奨する
31. ARDSではプラトー圧(Pplat)を30cmH2O以下にすることを推奨する
32. 中等度から重度のARDSではhigh PEEP(>10cmH2O)を提案する
33. ARDSではconservativeな輸液戦略を提案する
34. 中等度から重度のARDSでは12-16時間の腹臥位を提案する
35.1 中等度から重度のARDSでは必要に応じて間欠的な筋弛緩薬の投与を提案する
35.2 人工呼吸器と非同調が持続する、持続的な深鎮静が必要、腹臥位療法をする、プラトー圧が高いまま持続する場合などでは48時間以内の筋弛緩薬の投与を提案する
36. ARDSではルーチンのNOの使用は推奨しない
37. 重度のARDSで適切な呼吸器設定にも関わらず改善しない場合は、気管支拡張薬の投与を提案するが、酸素化が改善しない場合は漸減中止する
38. 適切な呼吸器設定にも関わらず改善しない場合は、リクルートメント手技を試すことを提案する
39. リクルートメント手技をした場合はincremental PEEPは使用しないことを推奨する
40. 適切な呼吸器設定や腹臥位療法などの治療にも関わらず改善しない場合は、VV-ECMOの使用やECMOセンターへの移送を提案する
 
治療
41. ARDSでない場合は全身ステロイドのルーチンの使用は提案しない
42. ARDSの場合は全身ステロイドの使用を提案する
43. 人工呼吸器管理の場合は経験的な抗菌薬投与を提案する
44. 重症で発熱がある場合は、アセトアミノフェンの使用を提案する
45. 重症の場合にルーチンにIVIgは使わないように提案する
46. 重症の場合にルーチンに回復患者からの血清療法は行わないように提案する
47.1 重症の場合にルーチンにlopinavir/ritonavir(カレトラ®)は使用しないように提案する
47.2 現時点で他の抗ウイルス薬に関する推奨なし
48. 現時点でリコンビナントIFNに関する推奨なし
49. 現時点でクロロキンやヒドロキシクロロキンに関する推奨なし
50. 現時点でトシリズマブに関する推奨なし

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挿管した場合はサージカルマスクとのことですが、マスクの備蓄状況によって対応が変わってきそうです
ECMOは最後の切り札になりそうで、MERSの時も死亡率を下げたとの報告がありますが、selection biasがかなりありそうです
ECMOの適応は症例を選びそうです
重症肺炎に準じてステロイドは使う可能性がありそうですが、効果に関してはcontroversialな印象です