息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

使い捨てマスクの歴史

A history of the medical mask and the rise of throwaway culture.
May 22, 2020: Lancet

 

COVID-19のパンデミックで、フェイスマスクの不足は現代医学と公衆衛生の脆弱性の象徴となった。

口や鼻を覆うのは伝統的な衛生方法で、ペストの鳥の嘴のマスクで代表される瘴気を浄化させる使われ方をした。これらの方法は18世紀には廃れていった。

1867年に英国外科医のジョセフ・リスターはパスツールによって発見された顕微鏡的な細菌によって創部の感染が起こると考えた。外科医のジョアン・ミクリッツは呼気飛沫から細菌が運搬されることを受け、1897年にガーゼを紐で結んだフェイスマスクをつけ始めた。当初は疑問を持たれたマスクだったが、1923年には欧米の病院の手術室の2/3で、1935年にはほぼすべての病院でマスクを着用していた。

1910-11年のペスト、1918-19年のインフルエンザの大流行により手術室外で医療関係者がマスクを着用するようになった。

20世紀初頭のフェイスマスクはガーゼを重ねたもので、洗濯して再利用可能だった。医療用マスクは1930年代から使い捨ての紙マスクに置き換わり、1960年代には合成繊維の使い捨てマスクに置き換わった。シリンジや針などともに、使い捨てに変更する潮流があった。衛生を保つ意味もあったが、備品管理や労働コストの削減、マスク会社の広告などの影響もあった。1975年に再利用可能なガーゼマスクは使い捨てマスクより優れている、洗濯により繊維が密になってフィルター効果が高まるかもしれないとの研究が出た。その後は工業的に生産された再利用可能なガーゼマスクの研究はない。

使い捨てマスクは医療用防護具の不可欠なものとなっており、次のパンデミックに備えて備蓄などの方法を検討する必要がある。

 

手作りマスクの効果をなにかの形で証明できればよいですが。。。