息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

COVID-19とインフルエンザH1N1の入院したARDSの比較

Comparison of Hospitalized Patients with Acute Respiratory Distress Syndrome Caused by COVID-19 and H1N1.

2020 Mar 26. pii: S0012-3692(20)30558-4. doi: 10.1016/j.chest.2020.03.032. [Epub ahead of print]

 

COVID-19が2019年12月に中国でアウトブレイクが発生してから、疾患の解明が注目されている。一方で、臨床家や疫学者にとってインフルエンザなどの他の呼吸器疾患と鑑別することも重要である。

この研究の目的はCOVID-19とインフルエンザH1N1による肺炎、ARDSの臨床的特徴の違いを同定することである。

後ろ向き症例対照研究である。COVID-19(n=73)とH1N1(n=75)のARDS患者のコホートを使用した。臨床症状、画像所見、治療、予後を比較、解析した。

COVID-19の年齢中央値はH1N1より高く、COVID-19は男性の割合が多かった(p<0.05)。COVID-19では乾性咳嗽、疲労、胃腸症状を呈する割合の患者が多かった(p<0.05)。H1N1ではSOFAスコアが高かった(p<0.05)。COVID-19のP/F比は198.2mmHgでH1N1の107.0mmHgより高かった(p<0.001)。COVID-19ではGGOがより多かった(p<0.001)。ウイルスに対する治療はCOVID-19の方が様々だった。院内でのCOVID-19の死亡率は28.8%でH1N1では死亡率は34.7%だった(p=0.483)。SOFAスコアで補正した死亡率はH1N1で有意に高く、リスクは2.009 (95% CI [1.563, 2.583], p<0.001)だった。

COVID-19とH1N1によるARDSでは臨床症状に違いがあった。H1N1のARDSと比較して病状重症度のスコアが低く、SOFAで補正した死亡率は低かった。