息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

癌性胸膜炎に対する胸膜癒着術でタルクの混濁液のドレーン注入と局麻下胸腔鏡での散布の比較

Thoracoscopy and talc poudrage compared with intercostal drainage and talc slurry infusion to manage malignant pleural effusion: the TAPPS RCT.

Health Technol Assess. 2020 Jun;24(26):1-90. doi: 10.3310/hta24260. (Original study)

 

英国では毎年約40000例の新規の癌性胸膜炎の患者がいる。英国の現在の標準治療はタルクの混濁液を胸腔ドレーンから投与する方法である。しかし、タルクを局麻下胸腔鏡で散布することを好む施設もある。どちらが有効な治療かというコンセンサスはない。

この試験は胸腔鏡でのタルク散布はドレーン挿入して混濁液投与する方法と比較して3ヶ月時点の胸膜癒着術の成功率を上昇させるという仮設を検証した。

他施設、非盲検化、ランダム化比較試験で経済的評価も行った。フォローアップは1,3,6ヶ月後に行った。

試験は英国内のNHSの17の病院で施行された。

癌性胸膜炎と診断され、胸膜癒着術が必要で、局麻下胸腔鏡を施行できる330例が含まれた。組織診断が必要な場合や肺の拡張が得られない場合は除外された。

ウェブによる中央コンピューターシステムで最小化法を用いた割付を行った。コントロール群はベッドサイドで胸腔ドレーンを留置し、4gのタルク混濁液を投与された。介入群では局麻下胸腔鏡で4gのタルクを散布した。

Primary outcomはランダム化90日後の胸膜癒着術の失敗とした。Secondary outcomeは死亡率、患者報告による症状とした。費用対効果も評価した。

166例が胸腔鏡、164例が混濁液を投与された。ベースラインは同等だった。Primary outcomは90日後失敗率に有意差はなく、介入群で22%(36/161)、コントロール群で24%(38/159)だった(OR 0.91, 95%CI 0.54-1.55; p = 0.74)。有害事象、secondary outcome、180日後の胸膜癒着術の失敗率(介入群46/161 (29%), コントロール 44/159 (28%), OR 1.05, 95% CI 0.63-1.73; p = 0.86)、90日までの入院泊数(介入群12±13泊, コントロール12±10; p = 0.35)、180日までの全死亡(介入群66/166 (40%), コントロール68/164 (42%); p = 0.70)を含め有意差がなかった。£20,000でのQOLで調整した費用対効果は介入群はコントロールと比較して0.36だった。

胸腔鏡が可能な患者を対象としたため、さらにフレイルな患者には当てはまらないかもしれない。非盲検化の研究のため、患者の症状の報告に影響した可能性がある。

TAPPS試験は癌性胸膜炎の管理でタルク混濁液と比較して胸腔鏡によるタルク散布は有用性としても費用対効果としても優れているとは言えないと大まかに示した。