息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

胸腔穿刺の際に陰圧吸引と自然滴下における合併症の評価

The Impact of Gravity vs Suction-driven Therapeutic Thoracentesis on Pressure-related Complications: The GRAVITAS Multicenter Randomized Controlled Trial.

Chest. 2020 Mar;157(3):702-711. doi: 10.1016/j.chest.2019.10.025. Epub 2019 Nov 9. (Original study)

 

胸腔穿刺は積極的な吸引か自然滴下によって達成される。この研究は自然滴下によって積極的な吸引に比べて胸部の不快感、再膨張性肺水腫、気胸といった合併症を減らせるかどうかを評価することが目的。

前向きの他施設のsingle-blindのRCTで、500ml以上の胸水貯留が予想される患者が対象。積極的な吸引か自然滴下を1:1で割り付けた。患者は100mmの胸部の不快感の指数を穿刺前、穿刺中、穿刺後につけた。胸腔穿刺は完全排液または持続的な胸部不快感、難治性咳嗽や他の合併症が出現した際は中止された。Primary outcomeは5分後の胸部不快感の指数とした。Secondary outcomeは48時間後の不快感や息切れなどが含まれた。

142例がランダム化され、最終的に140例が解析された。Primary outcomeは有意差がなかった(visual scale analogの差 5.3 mm; 95% CI, -2.4 to 13.0; P =0.17)。Secondary outcomeの不快感や息切れは群間で有意差がなかった。ドレナージの量は同程度だったが、自然滴下では有意に処置の時間が長かった(平均の差 7.4分; 95% CI, 10.2 to 4.6; P < 0.001)。重大な合併症はなかった。

積極的な陰圧か自然滴下はどちらも安全で、同等の息切れや不快感の改善を示した。積極的な吸引では処置時間が短かった。

 

個人的には指導医から多量に排液する(1000ml程度)時は自然滴下と習いました

この研究では陰圧吸引をしても安全とのことですが、気胸などの重大な合併症の頻度は0.1%未満と予想されます

本当に安全と示すにはnがもっと必要な気がしますが、実臨床ではどちらの方法でも問題ないのかもしれません