息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

コロナウイルス感染症による妊娠の影響のメタアナリシス

Outcome of Coronavirus spectrum infections (SARS, MERS, COVID 1 -19) during pregnancy: a systematic review and meta-analysis.

Am J Obstet Gynecol MFM. 2020 Mar 25:100107. doi: 10.1016/j.ajogmf.2020.100107.

 

コロナウイルスによる感染症、特にSARS-CoV-2によるCOVID-19が妊娠や周産期に与える影響を調べることがこのシステマティックレビューの目的。

Medline, Embase, Cinahl, Clinicaltrials.govのデータベースを使用してSARS、MERS、COVID-19、妊娠の組み合わせで検索した。検索と選択の基準は英語文献のみとした。

Inclusion criteriaは妊娠したコロナウイルス感染症SARS、MERS、COVID-19)が確認された患者とした。

メタアナリシスでデータを結合して報告した。妊娠のアウトカムは流産、早産、妊娠高血圧腎症、早期破水、胎児発育遅延と分娩方法とした。周産期のアウトカムは胎児仮死、5分後のApgarスコアが7点未満、新生児仮死、NICU入室、周産期死亡、垂直感染とした。

19の研究で79例が含まれた。41例(51.9%)はCOVID-19、12例(15.2%)はMERS、26例(32.9%)はSARSだった。統合した肺炎の診断は91.8%であり、最も多い症状は発熱(82.6%)で、咳嗽(57.1%)、呼吸困難(27.0%)だった。すべてのコロナウイルス感染症で流産は39.1% (95% CI 20.2-59.8)だった。37週未満の早産は24.3% (95% CI 12.5-38.6)だった。早期破水は20.7% (95% CI 9.5-34.9)だった。妊娠高血圧腎症は16.2% (95% CI 4.2-34.1)だった。胎児発育遅延は11.7% (95% CI 3.2-24.4)だった。84%は帝王切開だった。周産期死亡は11.1% (95% CI 84.8-19.6) で、57.2% (95% CI 3.6-99.8)はNICUに入室した。COVID-19では妊娠の最も多い有害事象は37週未満の早産で、41.1% (95% CI 25.6-57.6)に起きた。周産期死亡は7.0% (95% CI 1.4-16.3)だった。41例の新生児で垂直感染が示された例はなかった。

COVID-19に感染した母体は90%以上は肺炎があり、最も多い有害事象は早産だった。流産、妊娠高血圧腎症、帝王切開、周産期死亡も通常の妊娠と比較して頻度が高かった。出版された症例で垂直感染が示された症例はなかった。エビデンスは急速に蓄積されており、すぐにアップデートが必要になるかもしれない。この知見により妊娠中のCOVID-19の感染の治療の指針になるかもしれない。