息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

COVID-19に関連する喘息患者の喀痰の遺伝子発現

COVID-19 Related Genes in Sputum Cells in Asthma: Relationship to Demographic Features and Corticosteroids.

2020 Apr 29. doi: 10.1164/rccm.202003-0821OC. [Epub ahead of print]

 

COVID-19はSARS-CoV-2によって引き起こされる。ACE2やTMPRSS2を介して宿主のウイルス感染が起こる。喘息患者の喀痰中のACE2やTMPRSS2の遺伝子発現の違いによってCOVID-19の死亡のリスクとなるサブグループを同定できるかもしれないと考え調査した。

330例のSevere Asthma Research Program-3に登録された喘息患者と79例の健常人の喀痰中のACE2やTMPRSS2、ICAM-1(コントロールとしてライノウイルスのレセプター)の遺伝子発現を分析した。

ACE2の遺伝子発現はTMPRSS2より低く、両者の遺伝子発現は喘息患者でも健常人でも同等だった。喘息患者の中で、男性やアフリカ系アメリカ人や糖尿病の既往のある方はACE2やTMPRSS2の高発現と関連していた。ICSの吸入によってACE2やTMPRSS2の発現の低下と関連したが、トリアムシノロンアセトニドの治療では両者の発現は低下しなかった。これらの所見はICAM-1とは異なり、ICAM-1では喘息患者で発現が上昇しており、人種や性差やICS使用の有無で一貫した差が見られにくかった。

男性やアフリカ系アメリカ人や糖尿病の既往のある喘息患者ではACE2やTMPRSS2の高発現であるため、COVID-19の予後不良なサブグループとしてモニターするのは妥当である。ICSの使用によってACE2やTMPRSS2の発現が低下することは、SARS-CoV-2の感染の感受性を低下させたり、COVID-19の死亡率を低下させる治療の可能性を保証するものである。

 

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