息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

IPFの抗線維化薬の有無と生存や呼吸機能の経過:INSIGHTS-IPFレジストリー

Survival and course of lung function in the presence or absence of antifibrotic treatment in patients with idiopathic pulmonary fibrosis: long-term results of the INSIGHTS-IPF registry.

2020 May 7. pii: 1902279. doi: 10.1183/13993003.02279-2019. [Epub ahead of print]

 

ドイツからの報告

IPFに対する抗線維化薬の観察研究のデータは不足している。

リアルワールドでの抗線維化薬の有無でIPFの経過を調査した。

ドイツのILD専門機関20施設に登録されたIPF患者の非介入の前向きコホート研究の連続データを解析した。データの質は自動化した妥当性チェック、施設内でのモニタリング、ソースデータの検証によって確かめられた。抗線維化薬の有無による患者のベースラインの背景で知り得る違いはpropensity scoreが適応された。

588例が解析可能で、平均年齢は69.8±9.1歳で、81.0%は男性だった。診断からの疾患の期間は1.8±3.4年だった。ベースラインの%FVCは68.6±18.8、%DLCOは37.8±18.5だった。平均の1.2±0.7年のフォローアップの期間で、194例 (33.0%)は死亡した。抗線維化薬の有無で、1年生存率は87% vs 46%、2年生存率は62% vs 21%だった。抗線維化薬は死亡リスクを37%低下させた(HR=0.63, 95%CI: 0.45; 0.87; p=0.005)。結果は多変量解析でも一貫しており、統計学的に有意だった。総合的なFVCとDLCOの低下は抗線維化薬の有無で統計学的な差はなかった。

IPFの患者で抗線維化薬を使用すると生存率は有意に優れていたが、呼吸機能の値は同じような変化だった。臨床的にはFVCやDLCOが安定していても、IPFの患者では早期死亡が起こっていることを示唆しているかもしれない。

 

リアルワールドのデータは貴重です

DLCOはかなり低下している患者層ですが、可能なら抗線維化薬は使ったほうがよさそうです