息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

症状で制限した胸腔穿刺の吸引による合併症

Complications following symptom limited thoracentesis using suction.
Eur Respir J. 2020 Jun 4. pii: 1902356. doi: 10.1183/13993003.02356-2019. [Epub ahead of print]

 

吸引による胸腔穿刺は気胸や再膨張性肺水腫を含む合併症のリスクが増えると言われている。最新のガイドラインでは再膨張性肺水腫を防ぐため、1.5Lまでのドレナージを推奨されている。吸引による胸水の症状で制限したドレナージの合併症の発生率と、再膨張性肺水腫のリスクファクターを同定することが目的である。

2004年1月1日から2018年8月31日まで、症状による吸引で胸腔穿刺をした、成人のこの施設での後ろ向きコホート研究である。合計10344回の胸腔穿刺が含まれた。

1.5L以上ドレナージしたのは19%だった。胸部不快感(39%)、胸水の完全排泄(37%)、持続する咳嗽(19%)によって胸腔穿刺は中止となった。胸部画像による気胸は3.98%で検出されたが、処置を要したのは0.28%だった。再膨張性肺水腫は0.08%で発生した。ECOG performance status 3以上で1.5Lドレナージすると再膨張性肺水腫の発生率が上がった(0.04-0.54%, 95% CI 0.13-2.06)。同側の縦隔偏位があっても胸腔穿刺の合併症は増加しなかったが、ドレナージできた量は少なかった(p<0.01)。

症状で制限した胸腔穿刺は多量にドレナージしても安全だった。処置が必要な気胸や再膨張性肺水腫はどちらも稀だった。同側の縦隔偏位があっても合併症は増えなかった。再膨張性肺水腫はPS不良で1.5L以上ドレナージすると増加した。胸腔内圧を測定しない、症状で制限した吸引による胸腔穿刺は安全だった。

 

単施設で気胸の率が高い気がします

胸水のドレナージは意外とたくさん抜いても大丈夫なのかもしれません