息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

IPF急性増悪に対するトロンボモジュリンα

Thrombomodulin Alfa for Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis. A Randomized, Double-Blind Placebo-controlled Trial.

Am J Respir Crit Care Med. 2020 May 1;201(9):1110-1119. doi: 10.1164/rccm.201909-1818OC. (Original study)

 

リコモジュリン®の日本からの報告

IPFの急性増悪の予後は不良である。凝固障害と血管内皮の障害が病態として知られている。トロンボモジュリンαはヒトの可溶性トロンボモジュリンの組み換えで、抗凝固と抗炎症作用がある。いくつかの臨床研究ではトロンボモジュリンαは急性増悪の予後を改善する可能性が示された。

IPFの急性増悪でプラセボと比較してトロンボモジュリンαの有効性と安全性を評価することが目的である。

プラセボを用いたランダム化二重盲検比較試験(第Ⅲ相)を日本の27施設のIPF急性増悪に対して行った。

患者はランダムに1:1でプラセボかトロンボモジュリンα(380 U/kg/日、14日間点滴静注)に割り付けられた。すべての患者は高用量のステロイドも投与された。Primary endpointは90日生存率とした。

82例がランダム化され、77例が試験を完遂して解析された(トロンボモジュリンα40例、プラセボ37例)。90日生存率はトロンボモジュリンα群で72.5%、プラセボ群で89.2%で、-16.7%の差(95%CI -33.8-0.4、p=0.0863)だった。安全性に関しては80例のうち、出血のイベントがトロンボモジュリンα群で23.8%、プラセボ群で10.5%起きた。

トロンボモジュリンαは90日後の生存率を改善しなかった。現時点ではIPFの急性増悪に対してトロンボモジュリンαの使用は勧められない。

 

個人的にはIPFの急性増悪に対してリコモジュリンを使用した経験はありません