息づく内科医

関東地方の呼吸器内科医です。

ダイアモンド・プリンセスのCOVID-19の104例

Clinical characteristics of COVID-19 in 104 people with SARS-CoV-2 infection on the Diamond Princess cruise ship: a retrospective analysis

Lancet Infectious Disease Published:June 12, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30482-5

 

進行中のCOVID-19のパンデミックはグローバルな脅威となっている。症状のオンセットと疾患の進行のマーカーとなる因子を同定することは喫緊の問題である。自衛隊中央病院(日本、東京)に入院して観察期間が終了するまでの、ダイアモンド・・プリンセス号に乗船して無症候性のSARS-CoV-2感染、軽症、重症のCOVID-19と診断された患者の臨床的な特徴を記述した。

2020年2月11日から2月25日まで自衛隊中央病院に入院した検査で確認されたSARS-CoV-2感染症患者の単施設、後ろ向き研究である。臨床記録、検査データ、画像所見が解析された。臨床転帰は2020年2月26日までか退院までの早い方までフォローアップした。無症候性SARS-CoV-2感染を臨床兆候や症状のないこと、重症COVID-19は肺炎兆候があること(呼吸困難、頻呼吸、SpO2<93%、酸素投与が必要)、軽症COVID-19はそれ以外と定義した。入院時の臨床兆候は観察終了時の無症候性を含む重症度と比較した。無症候性SARS-CoV-2感染者の中で症候性となることやCOVID-19の進行と関連する因子を同定するため単変量解析を行った。

最終解析には104例が含まれ、年齢中央値は68歳(四分区間47-75)、54 例(52%)は男性だった。入院時に43例(41%)は無症候性、41例(39%)は軽症、20例(19%)は重症だった。観察終了時点で33例(32%)は無症候性、43例(41%)は軽症、28例(27%)は重症だった。入院時は無症候性だったが入院中に症候性となった10例は、観察期間中ずっと無症候性だった33例と比較して血清LDHが有意に高かった(5 [50%] vs 4 [12%] ; オッズ比 7·25, 95% CI 1·43–36·70; p=0·020)。観察終了時点で軽症のCOVID-19は重症と比較して高齢 (中央値73歳 [55–77] vs 60歳[40–71]; p=0·028)、入院時のCTで浸潤影があることが多く(13/28 [46%] vs 9/43 [21%]; p=0·035) 、リンパ球が減少 (16 [57%] vs 10 [23%]; p=0·0055)していた。

高齢、胸部CTで浸潤影、リンパ球減少はCOVID-19の進行のリスクファクターの可能性があり、臨床管理の改善に寄与するかもしれない。

 

ダイアモンド・プリンセスの臨床疫学的な論文としては初めての報告とのこと。

Limitationにあるように、自衛隊中央病院はほとんどが軽症者(挿管は1例)のため船全体の結果を反映しているとはいえなさそうです。